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第2回

理系と文系の垣根を超えれば、未来が見える

倉持 隆雄さん(Team Imagine所属)国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター 副センター長

収録日:2019.03.06

1979年に科学技術庁に入庁以来、40年にわたって日本の科学技術を振興する仕事に就いてきました。20世紀後半の高度成長期は、「いい研究をすれば、いい技術を開発すれば、必ず報われ国も豊かになる」とプロダクトアウト志向が強く、研究者も技術者も専門領域に閉じこもりがちでしたが、それでも十分に社会の要請に応えることができていました。

ところが、経済成長が終わり、インターネットが発達し、AI(人工知能)をはじめ次世代の科学技術が普及するようになった21世紀、「いい研究をしていればよかった」という時代は終わり、研究者も技術者も、己が作り出す未来の科学技術の意味や意義について、自覚する必要が出てきました。2018年、DLabのプロジェクトに参加したのは、ちょうどそんな頃でした。

日本の大学教育は理系と文系の知性が協業するチャンスが存外ありませんでした。大きな力を持つ科学技術は、人間を幸せにも不幸にもします。持続可能な未来を志向するには、科学技術と人間の関係を真剣に考えなければいけない。DLabでは、理系の先生と文系の先生が一緒に人類の未来を考え、共に「未来」をデザインするという野心的な試みが動き出していたのに感銘を受けました。

様々な人たちが混ざって、科学技術を通じて未来を考える場を大学内にたくさん用意してほしいな、と思います。私も理系出身だからよくわかりますが、実験や研究に没頭する学生たちにとって、大学のキャンパスそのものが小さな社会です。この小さな社会に外部の人たちがどんどん加わり、意見を交わす。単なるプロダクトアウトに終わらない、より創造的な研究が生まれるのではないか、と思います。DLabの活動を通して、人々がより素敵に生きるための科学技術を生み出すことができる研究者や技術者が、東工大から羽ばたいてほしいですね。

プロフィール

1977年東京大学 理学部 生物化学科卒業、1979年東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専門課程修士課程修了。同年科学技術庁計画局計画課へ入庁。研究開発局宇宙国際課長、独立行政法人理化学研究所理事・次世代スーパーコンピュータ開発実施本部副本部長・X線自由電子レーザー計画推進本部長、文部科学省大臣官房審議官(研究振興局担当)、同省研究振興局長、同省国際統括官などを歴任し、2012年5月より内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)として科学技術の振興に尽力。2015年国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 研究開発戦略センター センター長代理、2019年より現職。