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第3回

過去とケタ違いのダイバーシティが未来を創る

林 千晶さん(Team Imagine所属)株式会社ロフトワーク 共同創業者 代表取締役

収録日:2019.04.26

東工大に関しては、日本の理工系大学のトップに君臨していて、頭のよい男の子、女の子たちがAIの話をものすごいスピードでしていて、隣にいても何を話しているかちっともわからない、というすごい偏見を持っていたのですが、DLabのメンバーになり、昨年10月のキックオフイベントに参加して、そのイメージはふっとびました。

日本の大学は理系=縦軸、文系=横軸に分かれていて、通常この縦軸と横軸は交わらない。ましてや東工大のような理工系大学は縦軸=理系しかない、そう思っていたのですが、大岡山キャンパスにお邪魔すると理系=縦軸の中に文系=横軸が、いい具合に混ざりつつある、ということに気づきました。連想したのは、私自身が所長補佐を務めているMITメディアラボのことでした。AI、建築、脳、ソーシャル…、20の多岐にわたるジャンルを率いる研究者と企業とが混ざり合って、新しいものが次々と誕生する。あの自由さ、あのクリエイティブ力を、私はDLabを通じて触れた東工大に感じました。

次に求められるのは具体的なアウトプットです。そこで重要となる参加者は、企業と現役の大学生たちです。今、若い人たちと話をすると、価値観が大きく変わっている、と感じます。企業は地球や社会の持続可能性そのものを商品やサービスの核に位置付けるべきではないか、と考えているのです。10年以内に企業には、サステイナブルで社会に対してプラスの価値を生むことが求められるようになります。となると、ものづくりに強い日本の企業には、次の時代のリーダーに返り咲くチャンスが訪れる。だからこそ、DLabと東工大に私は期待したいのです。マネーゲームではない、持続可能なものづくりの規範を示してほしいのです。そしてその牽引役としてぜひ現役学生たちをプロジェクトに引き込んでほしい。

さらにジェンダーや国籍も混ぜてほしい。東工大の学生の男女比率は、9対1とうかがいました。MITは、55対45。ほぼ1対1です。意識しないと、ジェンダーや国籍のバイアスは克服できない。AO入試や推薦入試などを駆使して、3年以内に女子学生比率を30%まで引き上げたら、東工大から、そして学生たちが参加するようになったDLabから、明るい未来を創造するプロジェクトが生まれてくると思います。日本一の理工系大学である東工大が、理系と文系の垣根を外した次世代型の教育研究機関になると、ここから未来を担うすごい人たちがたくさん巣立つ。そんなことを考えています。

プロフィール

早稲田大学 商学部、ボストン大学(米国)大学院ジャーナリズム学科卒業。花王株式会社を経て、2000年に株式会社ロフトワークを起業。ウェブデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。「FabCafe(ファブカフェ)」「MTRL(マテリアル)」「AWRD(アワード)」などを運営し、マサチューセッツ工科大学(MIT。米国)メディアラボ所長補佐、官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」代表取締役社長も務める。