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第6回

リアルな経験を積み重ねて欲しい

角南 篤さん(Team Imagine所属)公益財団法人笹川平和財団 理事長、政策研究大学院大学 学長特別補佐/客員教授

収録日:2019.05.28

東工大は日本最先端の科学技術を広く扱っているユニークな大学です。DLabにお誘いいただいたとき、東工大から未来社会のビジョンを発信することは、日本社会がビジョンを持つことと同じだと思いました。つまりこれは日本が今後あるべき姿を検討し描いていくという重要なプロセスであり、それに関われるのは非常に光栄なことでした。そして、このプロジェクトに参画してみて、最初に東工大の学生さんたちのエネルギーを感じました。ただ、おとなしいとも思いました。理工系の分野に秀でて東工大に入っているわけですから、いろんなことができると思うのですが、自分の持っている力が社会を変えられるということに対して、謙虚な感じがしたのです。社会的なビジョンを持って、アグレッシブにという雰囲気ではなかったですね。だからこそ、DLabは、未来の社会を自分で考え、その未来社会に向けて自分たち自身で今をつなげていくという、主体的な考えを個々に持てるいい機会になるのではないでしょうか。

また、DLabは、ジャンルを超えた人たちが集まった組織であるという点も魅力的です。東工大および外部の有識者、現役の企業の方々、卒業生も加わっています。大学教育は、教員と研究と学生というラインでしかつながっていない。そこに全く別の世界の人が入って学生と関わっていくと、異なる視点や発想が生まれます。教える側にとっても刺激的です。いままで自分が一生懸命蓄えてきた知見なり経験を学生に伝えるだけではなく、外とも連携しながら、より幅広い形の教育を作れる機会になります。そして教員自身の見方も広がって、その研究にも反映されるとしたら非常にいいことですね。

ビッグデータの時代の中で、どうやって私たちは新しい挑戦、経済で言えば競争に勝って生き残るかということが焦点になっていますが、私はリアルなデータが大切だと考えています。1億人のデータから「あなたの傾向はこうだ」と言われても、あくまでも傾向に過ぎなく、リアルにいる人が語る経験とは重みが全く違います。数の問題ではないのです。実際に体験をする。ものを作ってみる。ものを壊してみる。東工大の学生さんたちには、リアルな経験を積み重ね、その経験を活かして未来を志向してほしいと願っています。

プロフィール

1988年ジョージタウン大学(米国) 外交政策・国際関係大学院卒業、1993年コロンビア大学(米国) 国際関係学修士を取得、2001年コロンビア大学 政治学博士号取得、2014年政策研究大学院大学 教授、学長補佐、2016年同副学長、2019年同学長特別補佐、2020年より現職。