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第11回

社会との対話で未来を創っていく

中野 民夫さん(Buzz Session所属)東京工業大学 リーダーシップ教育院、リベラルアーツ研究教育院 教授

収録日:2019.06.13

中野教授の専門分野はワークショップやファシリテーションです。2017年に発表した「東工大ステートメント(Tokyo Tech 2030)」(以下、東工大ステートメント)の策定にあたっては、大学執行部や中堅・若手の教職員を中心に数回のワークショップを開き、対話を繰り返しました。このワークショップは非常に好評でしたが、参加者を限っていたこともあり、教職員や学生がもっと幅広く一緒になって東工大の未来を考えようということで、総勢207人が一堂に会した大規模なワークショップを開催しました。それを更に発展したものとして、DLabのキックオフイベントでワークショップを行い、中野教授がメンバーに名を連ねることになりました。発足から約1年が経ち、DLabの今をどう思うか、そしてこれからのDLabの展望について、お話をうかがいました。

DLabの活動の柱の一つとして、社会との関わりがあります。これまで「東工大の未来を語り合う大ワークショップ」などで行ってきたことは、教員、職員、学生の壁を超えて一丸となって東工大の未来を語ろうということでした。年齢や職種などに違いはあっても、同じ東工大の一員として大学の未来を考えよう、というスタンスです。これに対してDLabでは、社会と対話をしながら未来を洞察し、それを実現する科学技術を考えるというスタンスであることが大事なのだと思います。大学の役割には、教育・研究のほかに、社会貢献や社会連携があります。私がかつて教授を務めていた大学では、地元の商店会と学生が一緒に七夕祭りを盛り上げたり、祇園祭のごみゼロ運動に取り組んだりと、地域社会の問題に学生が積極的に関わっていました。こういった地域社会と連携した活動は、日本全国の大学で取り組まれていると思います。ところが東工大では、地域社会への関わりが薄いと感じます。理工系の大学であり、多くの学生が修士や博士に進学する専門性の高い大学であることが、地域社会の身近な問題に結びつきづらいのかもしれません。しかし、これからの社会がどうなるか、どうしたいかを考えるためには、学生が社会性や人間性をもっと幅広く身につけた上で、社会と一緒に未来の科学技術を考えないといけません。SDGs(持続可能な開発目標)など、世界の今後を見据えてより視野を広げていくことが重要かと思います。

現時点のDLabは、創造的な活動には不可欠な「混沌」の時期に入っていると思います。何か大きなものを生み出す前には生みの苦しみの時代があって、新しいことをやろうとしても思い通りにはいかない。今後、ワークショップなどで社会との対話を繰り返し、クリエイティブカオス(創造的混沌)を経て少しずつ前に進んで行くのを楽しみにしています。

プロフィール

1982年東京大学 文学部 宗教学科卒業、株式会社博報堂勤務を経て、2012年同志社大学 大学院総合政策科学研究科 教授、2015年より現職