loader
DLab

Research Center for DEsigning
Social Innovation in Global Network

Follow Us
Language

第14回

未来社会DESIGNからACTIONへ:東工大の「行動力」でDLabの活動を一巡させたい

梶川 裕矢さん(Team Imagine所属)東京工業大学 環境・社会理工学院 イノベーション科学系/技術経営専門職学位課程 教授

収録日:2020.02.12

梶川教授の専門は技術経営学や科学技術政策などで、データ分析や知識工学を用いてイノベーションを創出するための方法論などを研究しています。東工大では主に技術経営専門職学位課程の講義を担当し、研究室に在籍する大学院生のほとんどが、企業での研究開発や事業企画の第一線を担う社会人です。DLabでは創設メンバーとして組織の立ち上げから関わってきました。そんなDLabの生みの親の一人とも言える梶川教授に、DLabの創設や今後の活動への思いについて聞きました。

私はDLabの立ち上げ当初からメンバーとして活動に関わらせてもらってきました。東工大の組織であるDLabが未来社会のあり方を世に提示していくのであれば、学術機関としての知見と洞察に裏づけられた、魅力的かつ説得力のあるものにする必要があります。そのような未来社会像を世に問うていく一方で、東工大は理工系総合大学として全学の方向性が比較的揃いやすく、何より提示した未来社会像を実現するのに欠かせない技術力もある。そうした強みをDLabの活動のなかでも生かしていければと考えてきました。

ここ20年来、世界の学術界では「社会に貢献することは大学の責務」という考え方が強くなっています。もちろん、「自分の選んだ専門分野をとことん突き詰めるなかで、新たな知を発見する」という従来型の研究も重要であることに変わりはないのですが、1割くらいは「人々が望む未来社会をつくるには、どんな技術が必要か」という発想で、新分野を切り開いていく研究があってもいい。そうした研究を大学発で生み出していくことは大学の社会的使命であり、東工大のプレゼンスをグローバルに高めることにもつながっていくはずです。

私は、DLabの活動は、「社会とともに人々が望む未来社会を考え、そこで必要となる技術や政策を検討し、それらを具現化して社会に貢献する」というところまでがワンセットだと考えています。DLabは2020年1月、およそ1年半にわたる活動を経て、未来社会を俯瞰するためのツールとなる「東工大未来年表」と最初の「未来社会像」を発表しました。これは大きな区切りの一つではありますが、社会に貢献するという意味合いでは、本当のチャレンジはむしろここからだと言えるでしょう。

未来社会像の実現や社会への波及効果を考えれば、企業との協力関係もより深めていく必要がありますし、同様の活動を行っている外部組織と連携してもいい。もちろん、東工大内部でも関連した研究開発や実証を進めていくことが大切で、この2020年度からは、未来社会像の実現に繋がる研究などを公募して支援するプロジェクトが開始されます。社会の皆さんとありたい未来を考え、それを具現化して社会に貢献し、さらに多くの方に参加してもらい、大学自身もコミットしてプロジェクト化し、DLabの活動を推進することで、未来社会像の実現に向けて小さくとも確かな一歩を踏み出す。未来社会像を実現する中で社会的評価を受けたり、活動の輪が広がったり、そういったサイクルをどんどん回すためにも、まずはDLabの活動をDESIGNからACTION、REALIZATIONへと一巡させられればと思います。

プロフィール

1999年東京大学 工学部 化学システム工学科卒業、2001年東京大学 大学院工学系研究科 修士課程修了、2004年東京大学 大学院工学系研究科 博士後期課程修了。2007年東京大学 大学院工学系研究科 特任講師などを経て、2012年東京工業大学 大学院イノベーションマネジメント研究科 准教授。2016年 東京工業大学 環境・社会理工学院 准教授、2017年より現職。