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第16回

未来を担う当事者とともに未来社会を考える

栁瀬 博一さん(Team Create所属)東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院 教授

収録日:2020.02.20

栁瀬教授はメディアの第一線での30年近いキャリアをもとに、メディア論を研究しています。大学では「メディア論」のほか、「教養特論:未来社会デザイン入門」や、社会貢献の視点から東工大での学びを見つめ直す「教養卒論」などの科目も担当し、DLabでは未来社会像を強い説得力を持つように仕上げるTeam Createに所属しながら、社会と広く対話を行うBuzz Sessionの活動にも関わってきました。そんな栁瀬教授に、DLabの特色などを聞きました。

私は2018年4月に東工大に着任するまでは、ずっとメディアの世界で仕事をしてきました。大学ではその経験をもとにメディア論を教えながら、各種対外コミュニケーション活動にも関わっており、DLabにもその一環で参加することになりました。

現在、政府、シンクタンク、企業など、さまざまな組織で未来社会について考える取り組みが進められています。そのなかで、大学の組織であるDLabならではの特徴を挙げるとすれば、「“未来社会”をつくる当事者が関わっている」ことだと言えるでしょう。つまり、高度な科学技術力をもって次世代の社会づくりを担っていこうとする学生が、未来の社会を考える場に加わっているということです。

DLabではワークショップやイベントを通じ、学内外の幅広い方と未来社会のあり方を考えています。理系の学生に対しては、一般に「口下手」や「内気」というイメージを持つ人が少なくないように思うのですが、東工大生は実際に対話の場を用意するとよく話す人が多い。しかも高校生、OB・OG、メディアの人など自分とは異なる立場の人がグループにいると、同世代だけの時より話が盛り上がります。これは新しい発見でした。

科学技術の話を無視して説得力のある未来社会像を描こうとするのが難しい一方で、社会、経済、人々の意識などへの視点が欠けたまま未来社会像を描いても、それは危ういものになってしまいます。ですからDLabでも、多様なバックグラウンドを持つ人々が対話しながら検討を進めることが非常に大切。東工大生にはそうした場を経験しながら、技術と見識をもって未来を築いていく力を高めていってもらえたら嬉しいですね。

ITツールやSNSの普及によって、メディア以外の人も発信手段を手にするようになった今は、あらゆる個人・組織がメディア化した時代だと言えるでしょう。なかでも多くの研究者が新発見に向けて努力を重ね、多彩な一次情報が集積している大学には、メディアとしての大きな可能性と責任があると考えています。DLabでもその自覚を持って、自分たちに何ができて、どんな潜在能力があり、どうすれば社会により貢献できるかをしっかり考え、責任をもって発信し、実行していくことが大切だと考えています。

プロフィール

1988年慶應義塾大学 経済学部卒業。日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に入社し、雑誌「日経ビジネス」編集部などで記者や編集者として活動した後、出版局で書籍編集に従事。 日経ビジネスオンラインの事業構築にも参画し、2008年より同媒体のプロデューサー、2012年より「日経ビジネス」「日経ビジネス オンライン」双方のチーフ企画プロデューサーを務める。2018年より現職。